Smiley face
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お気に入りのメッツ帽をかぶって田仕事

記者コラム「多事奏論」 本社コラムニスト(天草)・近藤康太郎

 野球はカープ、ベースボールはメッツの狂的なファンを続けて数十年。ニューヨークに住んでいたときはシーズンチケットを買ってスタジアムに通い詰めていたのだから、いつ仕事をしていたのか、あまり記憶にない。

 そのスタジアムでいちばんどでかい喚声が起きた試合はよく覚えている。2000年のアトランタ・ブレーブス戦。歓声ではない。怒声。怒りで球場が揺れた。

 ブレーブスの抑え投手ジョン・ロッカーが、スポーツ誌でニューヨークの街をこきおろしていたのだった。いわく、ニューヨークで7番線に乗ったとしてみな。髪を紫に染めたガキに同性愛のエイズ患者、4人も子供を連れた20歳くらいの女。気がめいるよ。外国人が好きじゃないんだ。ニューヨークじゃ1区画を歩いて英語が聞こえないときもある……。

 これにはニューヨーカーも怒ったね。肌の色も言葉も性的指向も、いろんなやつがいる。それがニューヨークのリアルであり、誇りでもあったから。

 ロッカーは「こんど試合があるときは7番線で行くつもり」ともうそぶいた。7番線とはメッツの本拠地球場へ向かう地下鉄。移民の多い下町を通ることで知られる。怒声に揺れる球場で、こんな看板を掲げるメッツファンがいて笑った。

 「ロッカー、7番線で来たのか? 来ないよな。おまえはいつも口ばっか(Only Mouth!)」

 参院選挙で「日本人ファース…

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